子宮筋腫
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子宮筋腫
子宮筋腫というのは、子宮にできる女性ホルモンの影響で成長する良性の腫瘍です。
発生する場所やその大きさで、引き起こされる痛みや月経血の量、不妊、妊娠・出産への影響の出方に違いがあります。
その頻度は無症状のものを含めると、成人女性の3人から4人に1人が持っているといわれる、極めてよくある腫瘍で、むしろ身近な病気と言っていいかもしれません。筋腫は良性の腫瘍ですから、直接命にかかわるものではありません。直ちに「自分は病気だ」「すぐに手術しなくてはならない」とパニックする必要はないのですが、放置せず、定期的な検診は必要です。ごくまれに急に大きくなってしまうことがあり、子宮肉腫という悪性のときもあるからです。
筋腫ができる原因は、まだはっきり分かっていませんが、子宮の筋層の中に筋腫の核というものがあって、それがだんだん大きくなるのでは、といわれています。筋腫の核は、誰でも生まれたときから持っています。これが、卵胞ホルモンの影響を受けて発育します。筋腫は、卵胞ホルモンの分泌が盛んな成熟期の女性に多く見られ、10代の女性には、あまり発生しないのです。また更年期以降は筋腫も小さくなってしまいます。
筋腫の核があっても、それが大きくなる人とならない人がいるのは、体質によるようです。また、子宮筋腫は遺伝すると思われがちですが、子宮筋腫は遺伝する病気ではありません。
子宮は内側から粘膜、筋肉、漿膜で構成されています。子宮筋腫の種類は、できた場所により、漿膜下筋腫、筋層内筋腫、粘膜下筋腫の3種類に分けられます。漿膜下筋腫とは、子宮の一番外側を覆っている漿膜の下にできる筋腫で、子宮の外側に突き出て大きくなります。筋層内筋腫とは、子宮の筋層の中にできた筋腫で、周りの子宮筋を押しのけて大きくなります。粘膜下筋腫とは、子宮の内側を覆っている子宮内膜の下にできる筋腫で、子宮腔内に突き出てきます。子宮筋腫の多くは、はじめは筋層内にできます。筋腫は丸く硬いコブ状のもので、平滑筋と線維組織でできています。子宮筋腫は、このようないろいろな種類の筋腫が複数できて、子宮が凹凸になり筋腫の成長と一緒に、子宮が肥大していきます。
筋層内筋腫
筋層内筋腫は子宮の筋層である平滑筋の中にできる筋腫です。症状はほとんどありません。周りの子宮筋を押しのけるように大きくなり、大きくなると子宮の形を変形させてしまうこともあります。それにより子宮内膜のはがれる部分大きくなり過多月経などの症状が現れることもあり、また不妊症や流産の原因にもなります。筋層内筋腫は子宮筋腫では最も多いタイプで、子宮筋腫の70%がこれにあたります。
漿膜下筋腫
子宮は、その外側を漿膜で覆われていますが、この漿膜の下にできる子宮筋腫を漿膜下筋腫と呼びます。この場合、筋腫は子宮の外側に突き出すような形で大きくなります。子宮筋腫の中でも最も自覚症状が少ないのですが、腰痛、下腹部痛、頻尿などの圧迫症状が見られます。また、有茎筋腫の場合はねじれるようなことがあると腹部に激しい痛みを感じます。子宮筋腫の20%がこのタイプにあたります。
粘膜下筋腫
子宮の内側は月経の時に剥がれ落ちる子宮内膜に覆われていますが、この子宮内膜の下に筋腫ができてしまうのが粘膜下筋腫です。筋腫は子宮の内側に向かって大きくなり突き出してきます。筋腫の表面の内膜が月経時に剥離するので月経時の剥離する面積が多くなり過多月経、貧血となります。また不正出血の原因にもなります。筋腫の存在が着床を妨げ不妊症や流産の原因にもなります。筋腫が比較的小さくても、子宮内膜の面積が大きく、症状が出やすいのです。子宮筋腫の中では、このタイプにあたるのは10%ほどと低いのですが、症状としては一番重い症状を示します。小さくても手術による治療が必要になることも多くなります。
筋腫分娩
粘膜下筋腫が茎を持って成長する特殊なケースを有茎粘膜下筋腫といいますが、この茎が長く伸びてしまい、最終的に筋腫結節自体が膣内へ脱出してしまう症状を筋腫分娩といいます。月経時には出血が非常に増え、貧血を起してしまうこともあります。
症状
筋腫の大きさや場所によって、症状が違います。筋腫が小さいころは、症状が認められないことが多く、筋腫が大きくなると、お腹を触ってしこりがあるのが分かるようになり、他にもさまざまな症状が現れます。また全く症状もなく健診などで見つかることも多いです。
筋層内筋腫や粘膜下筋腫の場合は、以下のような自覚症状が強く現れますから、早期発見も可能です。一方、漿膜下筋腫の場合は、かなり大きくなっても症状があまり現れません。
過多月経、過長月経、不正出血
筋腫があると、子宮内膜の表面積が広くなるため、はがれる内膜の総量が増えて経血量が増えます。レバーのようなかたまりが大量に混じることもあります。また、月経がいつまでも長引いたり、月経以外のときに出血したりすることもあります。
貧血
過多月経や過長月経が原因で起こります。ひどくなると、動悸や息切れ、めまい、頭痛などを起こすようになります。
腰痛、便秘、頻尿
筋腫が大きくなると、周囲の神経や臓器を圧迫するために起こります。足に静脈瘤が出ることもあります。
不妊、流産、早産
筋腫があると、子宮の内腔が正常な形でなくなったり、子宮内膜からの分泌物が増えたりして、受精卵が着床・発育しにくくなります。筋腫が卵管を圧迫して、受精卵が通過できない場合もあります。
治療
子宮筋腫は、基本的に良性の腫瘍のため、治療が必ず必要というわけではありません。そのため、子宮筋腫の治療方針は、子宮筋腫による症状によって決められます。
子宮筋腫による症状がない場合は、経過をみて定期的に検診を受ける、経過観察になります。
経過観察とは、それぞれの状態に合わせて3~6ヶ月に1回程度、定期的に検診で診察と画像診断を行って、子宮筋腫の大きさや、子宮筋腫による症状の有無を確認することです。経過観察の間は、生理の時の出血量や不正性器出血の有無、おりものの状態、下腹部痛などと、めまいや身体がだるいなどの貧血の症状がないか日常的に気をつけます。定期的に子宮筋腫の検診を受けることで、子宮筋腫にともなう貧血など、様々な症状が出るのを早く予防でき、また、子宮肉腫や子宮内膜症なども早期に発見できるので、決められた間隔できちんと検診を受けることが大切です。
症状によって、手術をするか、経過をみるかのいずれかになります。治療法の選択は医師によりさまざまですが、
一般的には
手術をする場合
筋腫がこぶし大以上で痛みが強い、過多月経などで出血がひどい、筋腫が短期間に大きくなっている、筋腫が不妊の原因になっている、悪性腫瘍との区別がつきにくい、といった場合は手術が必要となります。
経過を見る場合
筋腫が小さく症状が軽い場合、更年期に近い人、妊娠中の人などは、定期的に診察を受けながら様子をみます。
薬物療法では、最近、子宮内膜症の治療薬として開発された薬で、卵胞ホルモンの分泌をコントロールして筋腫を縮小させる効果のあるスプレキュアなどのGnRHa製剤が用いられます。漢方薬も一般的に用いられます。
薬物療法
子宮筋腫が原因になっている症状を軽減するための薬物療法と、一時的に子宮筋腫の成長を抑え、子宮筋腫を大きくしないことを目的とする薬物療法があります。
薬物療法による治療は、子宮筋腫による生理の時の生理痛の緩和、月経過多・貧血の改善、腰痛や便秘、排尿障害、下腹部の痛みなどの症状を少しでも軽減することが基本になっています。
子宮筋腫の薬物療法による治療で、最も多く使われているのGn-RHアナログ療法という偽閉経療法です。この薬物療法による治療は、合成ホルモン剤による治療で、女性ホルモンの卵胞ホルモンの分泌を抑え、排卵を起こらなくさせ生理を止め、閉経に似た状態をつくり出す方法です。この治療中は、体内の卵胞ホルモンが不足して、骨粗しょう症になりやすく、長期間続けることはできません。通常4~6ヶ月治療し再度大きくなるようなら6ヶ月の休薬後再開する方法をとります。薬物療法では子宮筋腫を縮小することはできても根治することはできません。
手術療法
手術が必要な場合は、子宮筋腫の大きさだけで決めるのではなく、子宮筋腫の症状によって決められることがほとんどです。薬物療法で症状が改善されない時や改善する見込みがない時、貧血がひどい時などは手術を勧められることが多くあります。月経の出血量が多く貧血がひどい人、子宮筋腫が原因となって腰痛や排尿障害、便秘がある人、粘膜下筋腫などで不妊の原因になっている人、子宮筋腫が10cm以上と大きく、また、子宮筋腫の成長が速く子宮肉腫などの疑いのある人、閉経後に子宮筋腫が成長した人などは、手術が必要な場合があります。
最近では子宮動脈塞栓術や集束超音波治療など手術しないで治療する方法も行われています。